中学校1学年第6時「ストレス体験ゲーム」 ストレスマネジメント (Wordバージョン)

 実生活の中では、様々なストレスを受ける場面があり、ストレスのために思うように出来ないことが多々あるものです。特に、自分が初めて体験するような場面では、緊張してしまって本来の自分の力が出せない・・という経験を体験した方は多いことでしょう。また、気がかりな出来事に遭遇して、気持ちがうわの空になり仕事が手につかなくなるようなことも一種のストレスによる影響なのです。授業の中では、このような実生活におけるストレスを完全に同じようにはつくり出すことはできませんが、ある程度の疑似体験として経験することはできます。この授業では2種類の疑似体験を用意しました。ひとつは「ブラックボックス」です。自分には箱のなかみは見えないが、他者からは見えているという状態です。自分からは見えていない箱の中に手を入れて何が入っているのかを当てるというのが課題です。手を入れる人ひとりが体験者であり、他者はすべて観察者となるのですが、観察者は黙って観ていません。あれやこれやと突っ込みを入れてきたり、過度に恐怖を与えてきたりします。体験者へのストレスはどんなものになるでしょうか。ふたつめは、「漢字探し」(パニックゲーム)です。ペーパー全面にひろがる漢字(100個以上−1種類)のなかから違う漢字を探し出します。全員が体験するリハーサルでは、何の漢字か教えてもらえるのですが、グループが代表として全員の前でやるときは誰も教えてくれません。いったいどんな漢字の中に違った漢字が混ざっているのか、そんな不安や皆の前でやっているという緊張感やプレッシャー、応援者が声を出して教えてくれているのに、ほとんど役に立っていないイライラ、しかも風船がどんどん膨らんでいく恐怖。そんなストレスだらけの環境の中でリハーサルのときのような力を発揮することができるのでしょうか。
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【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.漢字探し
2.ジョーズのBGM(YouTube)

【ねらい】 ストレスマネジメント
 実際にストレスを受けた状況での活動を体験したり観察したりする。ストレスが心や行動にどういう影響を及ぼすのか、感じたことを共有していくことで気づきを深めていく。


【概要】
 二本立てのエクササイズで構成した授業である。『ブラックボックス』では、体験者は中が見えない箱に手を入れ、何が入っているのかを当てる。体験者以外は全員観察者である。観察者は中に何が入っているのかが見える状態にあり、体験者がどのような様子で当てるのかを観察をする。体験者は多くの場合、中が見えないので不安に感じたりする。『パニックゲーム』は、あるひとつの漢字以外の漢字を10個探す作業を行う。平常では、そんなに難しくない漢字探しである。しかし、学級の代表としてみんなの前で漢字探しを行うのであるが、空気入れで膨らまされている風船が割れるまでに探さなくてはいけない。不安をあおるBGMも流れている。どういう気持ちで体験者は課題に取り組んだのか。風船が割れる割れないは別にして、観察者とともに感じたことを共有していく。

【ポイント】
 大変盛り上がる。「楽しかった」というだけで終わらさないために、体験者から必ず感想や感じたことを聴き出し、全員で共有する。体験者に具体的に訊くことが重要である。


【子どもの気づき】
・見ている人は「普通にさわれるのに」と思うかもしれないけど、やっている人にとっては何も見えずに手だけを入れるからとても怖いんだろうなと思った。
・風船や音楽、みんなの声があることで,冷静なときにはできる簡単なことができなくなるということがわかった。見ている方は楽しかった。
・普通にするよりも応援やミッションみたいなものがあると緊張してしまって、うまくいかない。テストや部活動の大会も同じだなあと思った。


【教員からのコメント】
・「バラエティー番組のよう!」と、子どもたちは興味津々でとても盛りあがりました。ただ、楽しく盛り上がる部分とその後の気づきを交流する時間を明確に区別することが大切だと感じました。体験者には「応援の声を聞いてどう思った?」「リハーサルの時と比べてどうだった?」など感想をうまく引き出すような発問を投げかけるとよいと思います。観察者の方は、体験者に共感してストレスを感じる子もいれば、テレビの視聴者のように楽しみながらゲームを見てストレス解消になったという子もいて、興味深いものがありました。



【しかけ】1.漢字探し
 「漢字探し」は4種類用意しています。全員が取り組む「リハーサル用」1種類とグループが前で代表として取り組む「チャレンジ用」3種類です。まず、リハーサル用ですが、はじめに「鯖」という漢字が書いてあることを全員に伝えてから初めて下さい。「鯖」を「さば」と読むことがわかっていない子どももいますので、そこはぬかりなく。そして、課題ですが「間違い探し」ではありませんので、「鯖以外の漢字を10個探す」と正確に伝えてあげます。取り組む時は班(グループ)の形にして進めます。班のメンバーがどう対応しているかが伝わるようにすることです。制限時間は30秒ですが、時計などを使わずに状況を見ながら残り時間を伝えます。それは、班のなかで半分以上の子どもが完成できているという状態が理想だからです。そうしないと、班が動き出しません。そして、カウントダウンは必須です。この時点からストレスを与えます。答え合わせは班で行います。それは、班の中で誰がこういう課題が得意なのかをシェアすることができるからです。代表に選ばれたときの仕事分担に役立ちます。
 代表として取り組む課題は3枚用意していますが、徐々に難しくなっています。3枚目は右に載せてますが、この問題では、100%風船が割れます。子どもたちがいかに優秀であっても授業の中で最低一回は風船が割れてほしいという気がするでしょう? そして、問題を前に貼り出す前に、必ず観察者のほうに問題をもって近づいてあげてください。そうすることで、観察者も観察しやすくなりますし、観察者が出す声「ほぅー」とか「えぇー」とか出てしまう声が、解く人にプレッシャーや不安を与えるものです。代表問題は、ベースにどんな漢字が書かれてあるのか教える必要はありませんし、教えない方が効果的です。



      漢字さがし=クリックすると大きくなります。

【工夫】
 風船を膨らますポンプですが、これもいろいろと試してみました。手押し式の自転車の空気入れは、スムーズに膨らんでいきますが、チューブが短いので、風船が下の方にしか見えないという事態になります。棒状の自転車の空気入れは、風船が膨らむのに時間がかかってしまいます。そこで、たどり着いたのが浮き輪用のポンプです。これだと、机の上で膨らませますし、風船も理想の位置に配置できます。ただ、チューブが外れたりというトラブルが起こらないように、テープで補強しておきましょう。わたしは、夏の時期になると100円ショップで買いだめしています。つぎに、風船とチューブの接続ですが、はじめはガムテープを巻いて接続していました。こうするとトラブルは防ぐことはできますが、2回目、3回目に割れた風船を取り替えるときに手間取ってしまうのです。そこで、ある先生に教えてもらったのですが、これも100円ショップで売っているバンドタイプのマジックテープを使うことです。これだと風船の脱着がスムーズに完了します。一回試してみてください。


【参考】
 この授業はわたくしのコーディネーションで、授業研究としてもっとも頻繁に実施されています。いろいろな学校が、この支援プランを参考に指導案等を考えてくれいます。松原第四中学校で実施された支援プラン(指導案)をアップしておきます。参考にしてください。

 大阪府松原市立松原第四中学校 ストレス体験ゲーム支援プラン