中学校3学年第3時「My24hours」 自己管理 (Wordバージョン)

 2009年、わたくしがまだ教員だったときの話です。文科省研究開発学校の最終発表会を間近にひかえ、公開授業をする予定の若い教員の授業を観に行ったときのことです。正直言って、わたしはかなりショックを受けました。担任はひとりの子どもに手を焼いていたのですが、学級全体の子どもの様子はバラバラで、ほとんどの子どもは担任の話を聞いていません。授業は予想通りガタガタ。終了後、わたしは彼女と話をしました。いろいろ様子を聴きながら、最後に、「わたしは、あなたの姿が依存的であるように感じます。」と返しました。納得してくれた彼女にスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」を紹介しました。10日ほどたって、再度、彼女の授業を観に行きました。何ということでしょう。彼女の授業は見違えるようになっていました。同じ人とは思えないほど自信をもった口調で全体をホールドしています。子どもたち全員が先生の言葉や指示を聴いているのです。終了後、再度話を聴くと、依存的な自分とちゃんと向き合ったと言います。そして、「7つの習慣」を購入して読破したそうです。その結果が、この成長ぶりでした。(このエピソードは、拙著「人間力向上の授業」のなかの「あいあいおじさん」の項目で詳しく紹介しています。)「7つの習慣」という書籍はビジネス書に分類されるものですが、世界中に多くの読者を有し、主催するセミナーには多くの企業から参加があります。そして、「7つの習慣」を導入している塾や学校もあるのです。
 「7つの習慣」の中で展開されている「4つのマトリクス」は、コヴィーの考えを、時間管理の領域に活用しているツールです。自分自身の行動に意味を込めていく。そして意味のある行動をスケジュールに組み込む。あたりまえと言えばあたりまえのことですが、このことの重要性に気づいていない人は多いものです。「My24hours」「自分の成長時間」の2時間続きの授業で学んでいきます。
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【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.人物辞典をつくろうワークシート
2.My24hoursワークシート

【ねらい】 自己管理
 日々、私たちは「〜したい」「〜になりたい」と感じていることを夢や目標という言葉であらわしている。夢や目標を持つということ自体大切なことなのであるが、それを現実のものにしていくために、日々の「行動」や「習慣」というものに焦点をあてていく。次時の「自分の成長時間」へつながっていくための土台づくりである。


【概要】
 他者へのアドバイスから始まる。他者に対しては不思議と客観的になれるのが人間である。何人かの登場人物の夢やしたいことに対して「どうすればいいか」を考えることから始まる。次に、「人物辞典を作ろう」というテーマで、自分の将来について考える。自分の半生が人物辞典に載るとしたらどのように書かれたいかという形で考えれば、これも自分を他者として見立てることで、不思議と想像しやすくなるのだ。そして、最後にMy24hoursワークシートで自分自身に迫っていく。他者からの客観的な見方を、無理なく自分自身に導入していく手法である。

【ポイント】
 今の自分自身が「どういう状態で」「どうしていきたいか」を自己認知するための授業である。自己認知は、言語化やイメージ化を通じて具体的になっていくので、「どういう状態で」「どうしていきたいか」ということを自己開示していくプロセスが大切である。自己開示の授業は、例外なく教員の自己開示がモデリングとして重要になってくる。「My24hours」を作成する前段で、教員がしっかりと自己開示したいものである。


【子どもの気づき】
・みんな、いろんな解決策があってすごかった。
・みんなの将来の夢などがわかって良かった。自分の未来を想像するのはおもしろかった。
・将来こうなるかはわからないけど、なりたいって気持ちは大事だと思いました。
・意外と寝てるのでびっくりした。ふだん、生活を気にしたことがなかったので新鮮だった。
・自分の毎日を振り返ると、何もやってなくて驚きました。


【教員からのコメント】
・個人差が大きい活動でした。「人物辞典」では、将来のことを考えるのが楽しいという生徒もいれば、将来のことをあまり考えていない生徒もいました。このようなことをシェアすることで、子どもには多くの気づきが生まれたようです。「My24hours」では、実際のことだけに書きやすく、楽しんで活動している生徒が多かったと思います。自分の時間の使い方について「時間をムダにしている」「意外と勉強していない」「将来を考えるきっかけになった」などの気づきが出てきました。こんなふうにワークショップとして時間管理に取り組むと、教師が説諭する何倍もの効果があったように思います。

【参考】
 スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」という本は、世界中の成功者に関わる資料を集め、その中から成功への法則を導き出したものです。@主体的になる、A目的をもってはじめる、B重要事項を優先する、CWinWinを考える、D理解してから理解される、E相乗効果を発揮する、F刃を研ぐ、この7つの習慣を自分自身の経験をふまえ展開しているのです。人生の成功は幸せであるとも言えます。私的であれ公的であれ、真摯に生きることから幸せが生まれます。わたくしは、日本におけるアサーションの始祖である平木典子さんとコヴィーのこの考えから「いじめ」や「不登校」を克服する道筋を得ることができました。
 「7つの習慣」は完訳版があらたに出版されましたので、日本語版の原版は絶版になったようですが、古本として比較的安価に入手することができます。

 
「7つの習慣」 スティーブン・R・コヴィー キングベアー出版