【ダウンロードできるもの】

支援プラン、 掲示物、 ふりかえり用紙、 
1.ワークシート
2.学習資料

【ねらい】 境界設定
 「境界」という概念を知り、境界の中で、「空間の境界」について調べる活動を通し、人によって、また場面によって心地良い距離感は違うことに気づく。


【概要】
 駅に着いた電車に乗り込んだ時、あなたはどの席に座りますか。人によっていろいろな考え方やとらえ方があることに気づくことができる。仲間の新しい一面が見つけられるかもしれない。人には自分と相手との間に居心地の良い距離と、これ以上近づかれると居心地が悪くなる距離がある。それは相手や場面によって違うが、その距離をグループで測ってみることで、自分との相手との境界線があることを知り、その距離感について学んでいく。

【ポイント】
 居心地が悪い距離と居心地が良い距離とを実際に測ってみることで、ここにその距離に微妙な違いがあることに気がつく。距離感の違いから実生活でトラブルに発展するケースも多い。これからの距離の取り方につなげていくことができる。グループは異性で行うと抵抗感がある生徒がいるので同性どうしで行う。また、境界設定という課題は大人の課題でもあるので、教員どうしで話し合ってみることも大切である。


【子どもの気づき】
・周りに人がいると、トラブルなどが起こりやすいけど、人がいないとトラブルが起きにくいから遠い席を選んだ人もいた。
・距離の取り方は人によって違っていた。仲のいい友達は近くても大丈夫。
・自分の感覚だけが全てじゃないから周りに気を使わないといけないと思いました。
・知らない間に距離を考えているんだなと思った。
・相手との距離は、気持ちを伝え合うことができるものだし、会話がいかに弾むかは全て距離が関係していると思った。


【教員からのコメント】
・子どもにとっては今まで考えたこともなかった「人との距離」が、人によってこんなにも違うんだって衝撃を受けていました。自分の考え方が全てと思い込んでいた生徒には、「居心地の良い距離は人によって違う」という新しい発見として今日の授業を受け止めることができました。また、この境界設定という課題に取り組む時に「参考文献」を読んでいると、教員間で話が盛り上がり、人生相談っぽく話し込んでしまっている教員もいました。


【参考】
 「自分の『境界』がわかりますか?」 アスク・ヒューマン・ケア ask選書(09) ask選書一覧

 アスク・ヒューマン・ケアから出されているask選書の中にある「自分の『境界』がわかりますか?」という書籍です。「境界設定」に特化した学習本は非常に少なく、webで検索しても「境界性人格障害(パーソナリティ障害)」の分野の書籍は多くヒットするのですが、この場合の「境界」は、まったく意味の異なる概念になります。しかしながら、「境界性人格障害」のあらわれとして「境界侵入」が発生することが多いという事実から、言葉の問題として、混乱を招いてしまうところがあります。ask選書は、多くの「依存症」からの脱却するためのヒントがちりばめられている書籍です。リーフレットのような感じですからすぐに読めますし、相談者として学習をはじめるときの入門書として価値があります。
 また、askのホームページには、アサーティブネスを理解するための「ライフスキルのページ」をつけてくれていて、アサーティブネスを容易に理解するためのツールも備えてくれています。

 ライフスキルのページ(アスク・ニューマン・ケア)

中学校2学年第6時「境界ってなに?」 境界設定 (Wordバージョン)

 「侵入する」「侵入される」=いじめや不登校を理解し、さらに克服していくために、わたしたちが理解しておかなければならない重要な概念です。そして「侵入する・される」という概念のそこに存在しているのは「境界」という一線です。「境界」には一般的に「適切な境界」というものが存在しています。これは、社会や文化や歴史背景によって大きく違ってきますが、社会が成熟していけばいくほど「適切な境界」というものに近づいていきます。逆に武力紛争などが起こっている地域などでは、大きく「適切な境界」というものから逸脱していくのです。人間一人ひとりの尊厳が保障されている社会であればあるほど「適切な境界」というものが存在する条件が整っているといえるでしょう。
 例えば、いじめが日常的に発生している学級を想像してみましょう。一人または何人かの「侵入する」人を頂点にして、「侵入される」人を下にする攻撃的なグループが存在します。それが何層にも広がり、攻撃的なピラミッド(又は台形)を形成します。下の層へ行けば行くほど「侵入される」度合いは深まり、人間としての尊厳を奪われ、無力になっていくのです。そして、「侵入された」人は、このグループの中では力を奪われていますが、グループを離れると「侵入されている」反動として強い攻撃性を出してしまいます。それが、家庭の中であったり、弱小動物であったり、その人自身への自虐的行為であったりするのです。「侵入される」人は、このような経験を積み重ね「侵入する」人へと変貌していくのです。境界設定を学習する意味は、この負のスパイラルを断ち切ることにあるのです。「自分自身を大切にし(自分自身としっかり対話して確かめる)、相手の気持ちを想像しながら主張する」というアサーティブな姿を追求することにより可能になります。このプログラムの究極のゴールであります。
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