教員や指導者に求められる力    

 
・子どもたちをホールドする力
 ・子どもたちどうしの関係性やルールをつくる力
 ・子どもたちに気づきを引き起こす力
 ・子どもたちの気づきに気づく力
 
・子どもたちへ介入(支援)する力
 ・子どもたちの中で起こったことをとりあげる力
 ・授業でビルドアップされた気づきを大切にする力
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5)子どもたちへ介入(支援)する

 
子どもたちの活動がルールに基づいたものになっているか、あるいは、子どもたちの行動が対等平等の精神に反したあり様を示していないかということに対して、教員は適切な介入(支援)を行わなければなりません。また、子どもたちの気づきを促進させていくような言葉かけや、問題提起を適切に行っていくという積極的な介入(支援)もさらに必要なのです。

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 子どもたちへ介入(支援)するということの一番の意味は、子どもたちに安心・安全な場を保証するということにあります。人間関係学科の授業における子どもたちのあらわれというものは、子どもたちの自己開示に基づいた、子どもたちのありのままの姿です。それは、「ありのままの姿でOKですよ。」という場を教員や指導者がつくり出すことによって保証されます。このありのままの姿から生み出される子どもたちの発言や行動が、子どもたちの気づきのベースになっていくのです。ということであれば、人間関係学科の場というものは、子どもたちが成長する場であると同時に、実はある意味、子どもたちにとって非常に危険な場でもあるということを、教員や指導者はしっかりと理解をしておかなければなりません。攻撃的な子どもは攻撃的に、受身的な子どもは受身的に、アサーティブな子どもはアサーティブに、ありのままの姿であらわれるということです。教員や指導者にとって、ここが最も大変なところでありますし、最も重要なところであります。
 人間関係学科の授業を通じて得ることのできるすぐれた要素というものは、人間としての「心地よさ」や人間に対する「魅力」に気づくことができるということです。人間関係学科の授業の中には、必ず参加体験型のエクササイズ(ワークショップ)が組み込まれています。個人で取り組むパーソナル・エクササイズもあれば、グループや班で取り組むグループ・エクササイズがあります。授業のねらいやルールは、インストラクションという形で子どもたちに伝えていくのですが、細心の注意を払ってインストラクションを進めていても、やはり、子どもですから、子ども一人ひとりのレディネスの違いにより、教員の意図がしっかりと伝わっていない場合があります。グループ・エクササイズの場合は、班の仲間からの働きかけにより、カバーできることもあるのですが、パーソナル・エクササイズの場合は、子どもの作業自体が別の方向へ行ってしまっている場合もあります。そういうこともあり、子どもたちがエクササイズに入り込んでからは、最低2回以上の机間巡視が必要になります。
 1回目の机間巡視は、ルールがちゃんと浸透しているか、子どもたちがエクササイズに入り込んでいるかを確認します。そこで、そうなっていないことが確認できれば、すぐさま介入&支援です。もちろん、ルールを理解していない場合は、その事をダイレクトに指摘するのもありですが、あえて、違う話題で声かけをすることがあります。それは、ちょっとしたきっかけで、子どもの作業がはじまる場合があるからです。たんに教員が近づいていくだけでも効果がある場合もあります。つまり、子どもの活動を子ども自身がやるということを尊重していくということなのです。「何してるの?」とか「なぜやらないの?」と直に言ってしまうと、その場の子どもの姿勢を矯正してしまうことになってしまう場合があるからです。そうなるよりは、あえて、自分が入っていないことを子どもに気づいてもらったほうが、子ども自身の気づきへのプロセスが近くなっていきます。
 2回目以降の机間巡視は、作業の進展具合を確認し、子どもの気づきをできるだけ拾い上げるために行います。学級全体の気づきを深めることができるかどうかは、この机間巡視にかかってきます。日常生活の中で見えなかった部分や、教員も驚くほどの独創的な発想、仲間に対する気遣いや、仲間をまとめていこうという行動、等々、エクササイズの最中は、教員の気づきの宝庫なのです。教員はその時、いちいち声をかけてもいいのですが、うなずいたり、肯定の気持ちを「へー、そうなんや」というような自分自身への言葉であらわしたり、子どもと目をあわすだけでも、充分指導者としての受けとめを果たしています。このような教員の数々の気づきが、ふりかえり&シェアリングで生きてくるのです。

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