教員や指導者に求められる力    

 
・子どもたちをホールドする力
 ・子どもたちどうしの関係性やルールをつくる力
 ・子どもたちに気づきを引き起こす力
 
・子どもたちの気づきに気づく力
 ・子どもたちへ介入(支援)する力
 ・子どもたちの中で起こったことをとりあげる力
 ・授業でビルドアップされた気づきを大切にする力
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4)子どもたちの気づきに気づく

 様々な「しかけ」を組み込んだ授業を通じて、子どもたちの中で起こっていることに対して、教員は全神経を集中しなければなりません。子どもたちの中に起こっている出来事こそが、それぞれのあり様や、そのグループにおけるそれぞれの子どもたちのあり様を示しているからです。子どもたちの一つひとつの行為や言葉や感情に敏感であることで、子どもたちの気づきを感じとれることが必要なのです。

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 実は、この「教員や指導者に求められる力」の3)の項目については、ある程度、授業の指導案やプログラムにおいてカバーすることができます。つまり、授業の指導案やプログラムに授業の「台本」としての性格の部分で、かなりの部分がカバーできるのです。指導案やプログラムがしっかりとしているものであれば、子どもたちに「気づき」を引き起こさせることは、教員や指導者にとって案外ハードルが低いと言えます。逆に言えば、指導案やプログラムというものは、子どもの「気づき」を喚起するものでなければならないということになります。
 しかし、仮に、そのようなしかけのもとに喚起された「気づき」に、教員や指導者が気づかなかったらどうなるでしょう。小学生や中学生の子どもたちは、心の成長を遂げていくプロセス上にいます。心のなかみを自分自身が形成していく途上にあるということです。ですから、教員や指導者がせっかく「気づき」を引き起こさせるための授業に取り組んだとしても、その子どもたちの「気づき」に気づかなければ、子どもたちレベルのフィードバックの還し合いにとどまり(実は、これだけでも意味はあるのですが)、限られた時間でしか実施できない人間関係学科の授業が、非常にもったいないものとなってしまうのです。つまり、子どもたちのせっかくの成長のチャンスを生かすことができなくなります。つまり、教員や指導者が子どもの「気づき」に気づくということは、人間関係学科を実施する上で、最も力量が問われるところであると言えるのです。
 授業のねらいから生じる子どもたちに起こるであろう「気づき」に対し、教員や指導者の全神経を集中し、子どもたちの「気づき」に気づいていかねばなりません。さらに、子どもたちの「気づき」というものは、ねらい通りに起こることが多いのですが、ねらい以上の、あるいはねらいからはずれた「気づき」というものが起こることがままあるのです。教員や指導者はねらいどおりの「気づき」に気づくことは、もちろん必要なのですが、実は、そうでない、あるいはそれ以上の「気づき」というものに気づくということが、人間関係学科では重要になってくるのです。(この事については、「教員や指導者に求められる資質 1)開かれた人間であること」の項目でふれます。)
 教員や指導者が子どもの「気づき」に気づくには、指導案上にあらわされている発問に対する返答であったり、授業の終わりの「ふりかえり」や「シェアリング」が主な機会になるのですが、本来的に参加型体験学習・ファシリテーションなどでの教員や指導者の「気づき」への気づきは、子どもたちのつぶやきから得るところが大きいと言えます。つぶやきとは、子どもたちがほんとうに疑問に感じたり、心のなかにスト〜ンと落ちたりしたことが思わずつぶやきとなって現れてくるのです。あるいは、仲間や教員に対して、つぶやくように質問したり、つぶやくように同意を求めたりする場合もあります。つまり。体裁とか打算とか損得とか、そういうことからまったくかけ離れた、子どもたちの心から湧きでてくるものがつぶやきであるということなのです。このような子どもたちの心から出てくる宝のようなあらわれを、できる限りキャッチしホールドします。このあわられに対して、教員や指導者がフィードバックを還していくのですが、それは直接還すこともありますし、直接還していても少し声を大きく出して、全体にあえて還す場合もあります。また、全体の動きをいったん止めて、100%全体に還す場合もあります。また、それをシェアリングまでとっておいて、最後に還すことも効果的である場合もありますし、他の子どもを通じて間接的に還す場合もあります。つまり、教員や指導者が子どもの「気づき」に気づくということは、何らかのフィードバックとセットであると理解していただければいいでしょう。

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