教員や指導者に求められる力    

 
・子どもたちをホールドする力
 ・子どもたちどうしの関係性やルールをつくる力
 ・子どもたちに気づきを引き起こす力
 ・子どもたちの気づきに気づく力
 ・子どもたちへ介入(支援)する力
 ・子どもたちの中で起こったことをとりあげる力
 ・授業でビルドアップされた気づきを大切にする力
ご質問はブログへ

1)子どもたちをホールドする
 人間関係学科では、すべての子どもが自分のあり様を出発点として、授業に参加しています。人間関係学科を通じて体現された子どもの姿は、主体的な姿であれ、依存的な姿であれ、教員はそのあり様を受け止め、子どもたちに返していく(フィードバック)作業をしなければなりません。そのためには、子ども一人ひとりを受け止めつつ、子どもたち全員を包み込んでいくこと(子どもをホールドする)が必要になります。

**************************************

 「子どもをホールドする」という概念は、人間関係学科の授業において非常に大切な概念です。1時間の人間関係学科のはじまりからおわりまで、貫徹されなければいけない概念なのです。つまり、この「子どもをホールドする」という項目を、一番はじめにかかげているのは、人間関係学科の第一段階としてではなく、一番大切であり、授業中一貫してもっておかなければならない教員の力として、という意味があるからなのです。
 ホールド(hold)という英語は、「つかむ」とか「抱きしめる」とかいう意味を日本語にあてはめることができますが、まさに、その意味のとおりに、「子ども(の心)をつかむ」「子どもを抱きしめる(ように受け止めて、フィードバックを還す)」ということを表しています。
 つまり、1)以下にかかげている6つの力(・子どもたちどうしの関係性やルールをつくる力・子どもたちの気づきを引き起こす力・子どもたちの気づきに気づく力・子どもたちへ介入(支援)する力・子どもたちの中で起こったことをとりあげる力・授業でビルドアップされた気づきを大切にする力)を発揮した結果、教員の中に備わっていく力であると言えます。これらの6つの力を人間関係学科で発揮していくことを通じて、子どもたち一人ひとりが教員から「自分は大切にされている」と感じるのです。この「自分は大切にされている」と感じることが大切です。「自分は大切にされている」と感じることができれば、子どもたちは自然に自分自身を開いていきます。自分自身を開いていけば、自分自身のことを素直に表現し、考えを主張することができるようになるのです。子どもたち一人ひとりが、自分のことを素直に表現できれば、子どもたちどうしの中で「いろんな人間がいるんだなぁ」という多様性を受け入れることができる素地ができます。そして、自分の考えを素直に主張することができれば、相手と折り合いをつけていこうとする力が湧きでてくるのです。子どもの変化はまちまちで、一回の授業でこのように心を開いていくのではありません。教員のこの姿が、子どもたちへのモデルとなり、一人が二人に、二人が四人に、四人が八人へという広がり方をしていきます。そして、最後にはすべての子どもたちが「心を開く」ことへのハードルを越えていくのです。
 すべての子どもたちに、このようなあり様を実現できるのは教員だけです。「子どもをホールドする」ということは、子どもに押しつけるものでもなく、子どもをコントロールするものとは無縁なのです。「子どもをホールドする」とは、子どもの心を開き、子どもの人間としての力を発揮させていくことなのです。

**************************************